奥田英朗『東京物語』

東京物語 (集英社文庫)

東京物語 (集英社文庫)

これまで奥田英朗の作品をいくつか読んできたけれど、これが一番気に入った。もちろん『伊良部』シリーズよりもである。
80年代をテーマにした久雄少年のビルドゥンクスロマンなのだけれど、青春の匂いで満ちているのだ。特に「レモン」の甘酸っぱさがたまらない。それぞれの登場人物の気持ちの移り変わりが恥ずかしいくらいによく分かる。
僕は昔を懐かしく思うほど長生きはしていない。"現在"の話としても楽しむことができた。
きっと何年かたって、これが青春グラフティとして読めるようになったら、もっと好きになれると思う。その日が今から待ち遠しい。