『スキップ』

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)

スキップを読了したので感想を書きたい。
僕はこの小説を読む前に「北村薫」の良い噂を驚くほど聞いていた。この「時の三部作」は傑作であるとか、ターンはケン・グリムウッドの『リプレイ』と構造が一緒(リプレイはとにかくおもしろい。ターンもの傑作である)とか、とにかく期待させられたのだ。
しかし、読んでみると、なにかしっくりこない。軽快な文体と文学的な表現が期待していた極上のSFというイメージと合わず、序盤は納得できなかった。
まず、あらすじを書こう。一ノ瀬真理子は17歳でクラシックを聞きながら眠ってしまう。起きると自分は42歳の桜木真理子になっていた。DVDのチャプターを飛ばすみたいに、時間がスキップしたのである。それで17歳の真理子は自分の25年後を知ることになる。同時に自分の立場、役割を知り、今の自分にできることを考えていく。
大体こんな感じである。この話でとにかく納得できなかったのは、元の17歳に戻ろうという努力なり行動なりが少なく、すぐに諦めてしまう点だ。もし自分だったら、クラシックを聞いてみるとか、またタイムスリップする可能性にかけて全精力を注ぎ込むだろう。この作品では、そのような描写が少なく、納得ができなかった。
だから、全560ページのうち、520ページまでは「つまらないなぁ」とおもいつつ読んでいた。だが、しかし。ラストで物語が急展開を見せる。年下に告白されたり、「や」のつく職業の人に助けられたり。その変がおもしろくて、読み終えた時「ああ、おもしろかった」と思った。終わりよければ全てよしである。舞上王太郎の『阿修羅ガール』とは真逆だろうか。あの作品は前半がおもしろくて、後半が微妙だった。
第二部である『ターン』を楽しみにしたい。

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)




本・読書 (100%) - 103位


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