ファイン (3) (ビッグコミックス)

ファイン (3) (ビッグコミックス)

fine. (4) (ビッグコミックス)

fine. (4) (ビッグコミックス)

現代アートの芸術家を目指す男の物語。27にして経済力皆無。かつての仲間達はそれぞれ折り合いをつけて生活を始めているのに対して、上杉は売れない絵を描き続けていた――(全4巻)

  • 夢か現実か

何かを創ってお金を稼ぐということは、どれをとっても難しいものがあると思います。才能、運、そして時間。ティーンエージャーが文学界の新星として現れて、やっぱり1,2作書いて消えていくことはありがちですよね。そしてあわよくばデビューできたとしても専業作家としてご飯を食っていけてる人なんて、いったいどれくらいの割合なんでしょう。
それはアートの分野でも同じで、いやもっと厳しくて。聞いたところでは、美大卒でもイラストレーターになれたり、マンガ家になれるのは稀だそうです。
なんだか、そんな現実を考えながら読んだら、上杉に共感を覚えました。才能があるような無いような、でも売れてない。もうずっと売れてない。自分の信じているものが評価されない。売れたいけど、信念はまげたくない。ジレンマを抱えつつ、前にも後ろにもいけずに混乱するさまは、リアリティがあります。

  • サイトーとの関係

かつての仲間達には、当時付き合っていた「りお」と、現在友達以上恋人未満の「サイトー」がいます。上杉はこの二人の間で揺れることになるのですが、物語の後半にサイトーが見せる歪んだ嫉妬心が見ものです。上杉の勝手な行動に振り回されて、仕返しとばかりに自分からも振り回す。んなことしたら結果どうなるかわかってるはずなのにやってしまう。その痛々しさったらないです。

  • 気になったところ

注文をつけるならば2点だけ。上杉とりおのすったもんだが少なかったことがちょっと残念だった気がします。それともう少し長くてもよかったかな。これは読者のエゴだろうけれど。もっとキャラクターを掘り下げて、たとえばモガミの過去などを書けば、群像劇としての厚みがでたかと思います。


最後に、今「なんかおもしろいマンガない?」と聞かれたら、『クピドの悪戯』と共に薦めるマンガです。損をすることはないので、ぜひ読んでみてください。