ネットで調べ物をしていたら、ある宗教の冊子は「まとも」だと書いてあったんです。読み物としては悪くない、と。なんだかその宗教であまり良い噂を聞いたことがなかったので意外に思いました。田舎の方では異端者扱いだったのを覚えています。ふと面白半分で読んでみるかと考えたその時、インターホンが鳴りました。普段パッシブスキルの「イルス」が発動するところなのですが、気まぐれで玄関まで行きました。覗き穴を見ると、グレースーツの小奇麗な中年紳士が立っていました。ブラウンの瞳が印象的で、誰だろうと警戒しないで出てみると、まさにその宗教の方でした。
「実はこれをお持ちしたんです……」
差し出されたのは、薄い冊子。もちろん偶然なのですが、ちょっと慌ててしまいました。どもりながらお礼を言って受け取り、今忙しいのでと断って扉を閉めました。なんだかすごいことがあるもんだなと関心しました。玄関でパラパラと捲っていると、まだ、紳士がすりガラス越しに立っているのに気がつきました。薄気味悪くて、何だろうと覗き穴を見てみると、じっとこちらを見つめているんです。それもかなりの眼力で。大きな眼に濁りは一切なく、ちょっと神秘的でした。見えてないのはわかっているのですが、自分の存在そのものを見透かされているような気になって、これが啓示を受けた者の力か! とへんなことを考えました。数分が過ぎた頃、紳士はふっとなにか思い出したように帰っていきました。今思えばただボーっとしていただけかもしれませんが、かなりびびりました。別にその宗教に入信したいとか、啓示や救済が必要だなんて思いませんが、中年紳士の眼力には関心させられました。