SS「赤いカラーコーン」

数日前のことです。歩道橋の階段を上りきったとき、誰かの視線を感じました。僕は休日にはメガネを外してぼんやりとした街を歩くことが好きだったので、その日はメガネをしていませんでした。別に電信柱と人間を見分ける程度の裸眼の視力は持ち合わせているので、危険はありません。
視線を向けるなにかは歩道橋の真ん中にいました。ぼんやりとしてハッキリとは見えません。ただ人ではないものを見ている気がしました。
そいつは赤いカラーコーンをかぶっていました。案山子みたいに棒立ちなのですが、右肩だけはあがっていて、人差し指でもって何かを指していました。
突然現れた気がして僕はギクリとして固まっていました。変態らしらと思いましたが、どこかで見たような愛着もあります。ただそいつが指しているのは、交差点の路肩に添えられた花束でした。枯れて茶色になった花はそれだけで不気味でした。僕は逃げるように引き返し、その後はそいつの事を忘れることにしました。
そして今日。どしゃぶりの中、傘を片手に自転車をこいでいました。あの交差点を渡るときに目の前でスリップ事故が起きました。僕はちらちら歩道橋を見ていたので、比較的ゆっくり歩道を渡っていて、運よく巻き込まれずにすみました。スリップした車は何個かのカラーコーンを撥ね飛ばして、何事もなかったかのように走り去りました。僕は直感で「ああ、あいつが助けてくれたのか」と感じました。ただ昨日あったはずの花束がなくなっていたことだけが、今でも気がかりです。

BLEACH 24 (ジャンプコミックス)

BLEACH 24 (ジャンプコミックス)

長期連載されているマンガが読めません。特にJUMP系のバトルマンガを読んでいると半分も読まないうちに飽きてしまいます。力のインフレが起きていて、もうなにがなんだか把握できないのです。揃いも揃って「目に見えない移動」をするのにはゲンナリします。もうバトルものは読めないのかもしれません。
だから最近はビルドゥングスロマンを切望しています。青年が大人になる瞬間が書かれた作品を探しています。


本・読書 (100%) - 85位


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