スポンジ伍長

久々に4百年ほどひきこもってみてわかったんだけど、スポンジってよく喋るね! あいつ以外におしゃべり。なんでかってバスルームを掃除したんですよ。カビが大繁殖しちゃって、そりゃ手ごわかったです。かれこれ6時間ほどゴシゴシ、ゴシゴシ。中腰になっていることが多く、腰が異常に痛くなりました。目も洗剤にやられたのかシパシパしてきて、もうやめようかと思ったとき「諦めるな!」って聞こえました。声の主はスポンジでした。
もう3日も部屋に閉じこもって遮光カーテン閉め切って壁際ベットで体育座りしてましたから、ああ、いよいよ頭がおかしくなってきたなって思ったんです。同時に「家電が喋る時代だからもしかしたらスポンジも喋るか」とわけのわからないことを考えていました。それに今は寒い冬にぬくもりを与えてくれるマウスだってあるじゃないですか。一生懸命掃除をする僕に気を使ってスポンジが喋りだしてもおかしくはない、と納得していました。
スポンジ曰く、自分は連合軍(カビのこと)には負けられない、とのことでした。驚異的な速度で増殖しバスルームを占領する連合軍に対してこちらの兵力はシャワー大佐とバス・マジックリン少尉。彼らとは3年前から組んでいくつもの死線を潜り抜けてきたらしいです。なんか他にもいろいろ聞いたのですが、心に残ったのは「自分は一兵卒でありますから休暇などいりません。この身が散り散りになるまで戦い続けることが夢であります!」という言葉でした。
僕はその心意気にいたく感激し、カビを一掃するまで腰が痛かろうが目が痛かろうが必死に戦いました。僕はもう孤独ではありませんでした。今は信頼できる仲間がいます。何時間もとりつかれたようにバスルームの壁やバスタブを磨きました。終わってからは少しだけ地味な達成感を味わうことができました。当然ですが、スポンジは捨てました。


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