このところ、はじめて会った人と上手く打ち解けることができるようになった。あれだけ人が嫌いだったのに、今は新しい出会いに魅力を感じる。だけど、その反動なのか、普段の生活での自分の半径何メートルかにいる人との距離感がわからなくなってしまった。
特に、友人との関係。僕の数少ない友人の中でも、特に長い付き合いのやつがいる。ずいぶん親しくなったんだけど、恋人同士がマンネリ化したときみたいに気まずい。さっぱりとした男同士の付き合いができなくなった。たぶん、僕が女々しくて、彼が優しい性格だからだろう。つまらないギャグで笑いあわなくなったのはいいのだけど、沈黙が辛くなっている。
問題なのは、喜んで欲しくて気を使ってみても、自分のほうに「やってあげた感」があるので、それを感じ取られてギクシャクしてしまうことだ。それに「親しき仲にも礼儀あり」を実行しようと、丁寧に喋ってみたりするものの、それがストレスになってもう二度と遊びたくない、なんて思う。距離感がつかめなくて、どれくらいそっけないほうがいいのかを考えてみたりする。まるで女々しいったらありゃしない。そんなことを考えていると、もう、自分の扱いが面倒でしかたがなくなってくる。

心理学の用語に「ハリネズミのジレンマ」というものがある。僕はこれを「攻撃するつもりがなくても攻撃してしまうこと」だと思っていた。本当は、そうではなく、愛し合うハリネズミ同士がお互いの針が痛くないように試行錯誤してちょうどいい距離を見つけるという話だったみたいだ。先生との距離、友人やバイト仲間との距離、家族との距離、恋人との距離。それぞれに適切な距離があるのかもしれない。だからもうちょい探り合って、一番居心地のいい関係になれるのを待とうと思う。