サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

かなり売れているようですね。たぶん映画のヒットか宣伝なのでしょうけれど、紀伊国屋により多く本が並べられている気がしました。なぜかそれらを見て少し機嫌が悪くなりました。僕は奥田英朗の文章が好きなんです。だから、流行のメディアミックスで売って欲しくなかった。奥田の原作が映画化(もちろんおめでたいことは前提で)されたところで、小説とは関係はありません。それぞれの作品は別物なのです。そう考えると、全然違う小説と映画を並べて同時に出されることに違和感を感じるんですよ。卵が好きな人に、卵が好きなら目玉焼きも好きでしょって一緒に出される感じかな。違う違う、確かに卵が原料になってるけど、おれは生卵そのもの味が好きなの! ってなりますよね? なりませんかね。
これは映画がおもしろいとか完成度が高いとか原作に忠実とか、そう言うことじゃなくて、どうにも販促によって売られてる感じなのか勘に触ったのだと思います。まあそれ言っちゃったら出版社が部数を決めて日販でキャンペーンして流通させて各書店で売れるようにpop書いたりしている全部に疑問を持っちゃうことになりますけど、やっぱ、あんまりにも好きなもんだから、人気が出るのに嫉妬しているのかもしれません。
誰とは書きませんが、地味な路上アーティストがいたんですよ。下積みの頃から応援していて、毎回ライブに行ってたんです。それがメジャーデビューしたら急に売れ出してみんなの○○○みたいになって、ああー売れちゃったか、もう路上もやらないんだなって寂しくなるあの感じと一緒なんだと思います。あの曲がアニメの主題歌にならなければ、まだ手の届く範囲だったのに……って。売れるのを喜ぶのがファンのはずなのに、なんか矛盾した感情を抱いちゃうんですよね。
奥田英朗Wikipediaは以前はそんなに情報詰まってなかったんですよ。それがいつの間にか最近の『家日和』が柴田錬三郎賞取ったことまで載ってて、どうにも天邪鬼精神を活発化させられるんですよね……。